苦手な教科を克服すること、これはいつの時代も子どもたちの課題ではないでしょうか?苦手な科目を避けて得意科目に集中するというのもひとつの方法ですが、苦手を克服する方法があるのであれば、取り組んでみたいと思うのも事実でしょう。今回は、日本で行われた調査ですが、考えられがちな苦手教科を克服するために、さらに時間や手間をかけて苦手に取り組むよりも先にやるべきことがあるようです。
Ishihara T, et al. Differential effects of changes in cardiorespiratory fitness on worst- and best- school subjects. NPJ Sci Learn. 2021 Apr 1;6(1):8. doi: 10.1038/s41539-021-00086-8.
子どもの心肺機能の変化と学業の変化の関係を調べました
本研究では,心肺機能の変化と学業成績の関連性に関する2年間の縦断的研究のデータを,この不一致の原因として考えられる成績点の個人内変動に着目して再解析しました。
札幌市内の公立中学校4校に通う1年生469人(男子255人、女子214人)を2年間追跡してデータを分析し、心肺機能の向上が個人の成績の最悪点と最高点に差をつける効果があるかどうかを調べました。
具体的には20mのシャトルランや長距離走(男子1,500m走、女子1,000m走)で体力を測定しました。また5教科(国語・社会・数学・理科・英語)のうち評定値が最も低いものを苦手科目、最も高いものを得意科目とし、5段階の評価の変化を成績の変化として検討しています。
体力の向上は、苦手な教科の成績の向上と関係していました
その結果、体力の向上は、最悪の成績点の改善と関連していることがわかりました。特に中学1年から3年にかけて体力が向上した学生は、苦手科目の成績が有意に改善することがわかりました(Pearsonの相関係数r=0.15、p<0.05)。
一方、成績優秀者(得意科目)においては、明らかな関連性は認められませんでした。
この傾向は、世帯の収入、親の学歴、性別、BMI、放課後の勉強時間など、成績に影響しうる体力以外の因子を考慮した重回帰分析でも、変化ありませんでした(苦手科目:β=0.15、P=0.002、得意科目:β=0.06、p=0.25)。
これらの結果から、体力の向上(心肺機能の向上)は、苦手科目の成績点を改善することが示唆されました。
今後、運動を頑張っている子どもがいれば、体力の向上に合わせて苦手科目は改善する可能性が期待できます。しっかり運動し、しっかり勉強することが大切ということだと思いますので、気長に焦らず見守ってあげることが大切ですね。
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