日本における子どもの死亡原因の上位に、不慮の事故があります。そしてその不慮の事故の最大原因のひとつに交通事故があります。この傾向は、先進国ではどこも同じです。ところが、同じ国内でもどの地域で交通事故にあうかによって死亡率に差がある可能性が指摘されています。今回の調査は、その疑問に回答を与えるものです。
Ali A. Mokdad, Lindsey L. Wolf, Samir Pandya, et al. Road Traffic Accidents and Disparities in Child Mortality. Pediatrics November 2020, 146 (5) e20193009; DOI: https://doi.org/10.1542/peds.2019-3009
米国の郡別に子どもの交通事故の死亡率の格差を検証した
交通事故は、米国における子どもの死亡原因の第一位となっています。
これまでの調査の多くは、国や州レベルで検討されてきましたが、地域の政策を導くためにはもっと小さい行政単位で情報を得ることの方が価値があります。
そこで、米国の交通事故による小児死亡率を、州よりも小さい行政単位である郡別に推定することを目的に、この調査が実施されました。
交通事故から30日以内に亡くなった子どものデータを郡別に集計しました
この調査では、自動車事故から30日以内に死亡に至った交通事故について、2010-2017年のFatality Analysis Reporting Systemデータベースを検索してデータを収集しています。
致命的な負傷を受けた 、15 歳未満のすべての子どもが対象です。
年齢および性別で標準化された死亡率を推定しています。また、外傷センターの利用可能性と郡の性質(都市であるか、農村であるか)の分類が、死亡率に与える影響も評価しています。
外傷センターが地域にあること、都市部であることが、交通事故死の減少と関係がありました
9,271人の小児死亡者を対象としました。
このうち45%が、現場で死亡していました。
子どもの年齢の中央値は7歳でした。
全体の死亡率は、子ども10万人当たり1.87人となっていました。
一方郡別の死亡率は、子ども10万人当たり0.25~21.91人となっていました。
郡内に外傷センターがあることは、死亡率の減少と関連していました(成人外傷センター[オッズ比(OR):0.59;95%信頼区間(CI)、0.52-0.66];小児外傷センター[OR:0.56;95%CI、0.46-0.67])。
都市化されていない農村部の郡は、大規模な中心都市の郡(非中核的郡[OR:2.33;95%CI、1.85-2.91])と比較して、より高い死亡率と関連していました。
外傷センターへのアクセスの改善が、子どもの交通事故死の地域格差を解消するためのひとつの方法になり得る
米国の郡間では、交通事故による子どもの死亡率に顕著な差があることがわかりました。
この知見は、子どもの死亡率が高く、外傷ケアへのアクセスが限られている、子どもの死亡リスクが高い郡において、標的を絞った公衆衛生的介入を導くことができるのではないかと思います。
これは地域に外傷センターを作るということではなく、アクセスを改善することが現実的な方法かもしれません。日本では、ドクターヘリやドクターカーを利用し、できるだけ早く治療が開始できるような工夫がされています。同様の調査を日本で実施したら、米国ほどの格差はないのかもしれません。
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