インフルエンザワクチンは、毎年のように接種することで、予防効果を維持することができます。残念ながらインフルエンザにかかることに対する予防効果は限定的ですが、接種することで重症化を予防できることが示唆されています。しかし、小児のインフルエンザ関連の入院および救急外来の受診に対する有効性については、国レベルのデータはほとんどありません。そこでインフルエンザワクチンの接種が、子どもたちの入院を減らすことができるのかについて、調査を行いました。
Angela P. Campbell, Constance Ogokeh, Joana Y. Lively, et al. Vaccine Effectiveness Against Pediatric Influenza Hospitalizations and Emergency Visits. Pediatrics November 2020, 146 (5) e20201368; DOI: https://doi.org/10.1542/peds.2020-1368
全米インフルエンザワクチンサーベイランスのデータを用いて解析しました
米国の 2018-2019 年シーズンは、最初インフルエンザ A(H1N1)pdm09 ウイルスが優勢でしたが、抗原が変化したインフルエンザ A(H3N2)ウイルスが、その後にピークを迎えました。
この調査では、このシーズンのデータを検証するため、新型ワクチンサーベイランスネットワークに登録されている小児のインフルエンザ関連の入院および救急外来(ED)受診に対するワクチンの有効性(VE)を推定しています。
米国内の7 ヵ所の小児病院(3 ヵ所は5 歳未満の子どもが受診する救急外来)において、生後6 ヵ月から 17 歳までの急性呼吸器疾患を持つ小児を対象に、インフルエンザの抗原検査を行いました。
加えてワクチン接種状況に関する情報は、保護者に記入してもらった報告書や州の予防接種情報システムおよび/または医療機関で管理している予防接種に関するの記録を参考にしました。
結果は多変量ロジスティック回帰を用いて、インフルエンザ陽性と陰性の子どものワクチン接種のオッズを比較し、ワクチンの有効性(VE)を推定しました。
入院を必要とした1,792人と外来で診療した1,944人を対象に調査をしました
急性呼吸器疾患で入院となった子どもたち1792人のうち、226人(13%)がインフルエンザ陽性でした。
このうちインフルエンザA(H3N2)が47%、A(H1N1)pdm09が36%、A(分類できない)が9%、Bウイルスが7%でした。
1,944人の救急外来の患者のうち,420人(22%)がインフルエンザ陽性で,A(H3N2)が48%,A(H1N1)pdm09が35%,A(分類されていない)が11%,Bウイルスが5%でしたた。
ワクチンの有効性(VE)は、全てのインフルエンザ関連入院に対しては41%(95%信頼区間[CI]、20%~56%)、A(H3N2)に対しては41%(95%CI、11%~61%)、A(H1N1)pdm09に対しては47%(95%CI、16%~67%)でした。
ワクチンの有効性(VE)は、インフルエンザに関連する救急外来受診に対して51%(95%CI、38%~62%)、A(H3N2)に対して39%(95%CI、15%~56%)、A(H1N1)pdm09に対して61%(95%CI、44%~73%)でした。
インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスの抗原性が変化しても入院率・救急受診率を40~60%減少させた
2018-2019年のインフルエンザワクチンは、抗原性がドリフトしたにもかかわらず、子どものインフルエンザA関連の入院と救急外来受診を40~60%減少させました。
例年、インフルエンザワクチンを接種する是非については議論があります。インフルエンザウイルスのワクチンを接種しているにもかかわらず、入院を必要とした子どもたちがいることがこの調査からもわかりますが、大切なことは罹患しても重症化を防ぐことができると言うことではないかと思います。
子どもたちをインフルエンザによる合併症から守るためにも、是非インフルエンザワクチンの接種をお勧めします。
コメント