学校における新型コロナウイルス感染拡大は防ぐことができる?

新型コロナウイルス

インフルエンザが流行すると学校(学級)は当たり前のように閉鎖されます。新型コロナウイルス感染が拡大した時、世界中で同じように学校が閉鎖されました。でも、どの程度感染拡大に貢献したのでしょうか?今回はオーストラリアからの報告です。

Macrtney K, Quinn HE, Pilsbury AJ, et al. Transmission of SARS-CoV-2 in Australian educational settings: a prospective cohort study. Lancet Child & Adolescent Health. August 3, 2020. DOI:https://doi.org/10.1016/S2352-4642(20)30251-0

オーストラリア、ニューサウスウェールズ州の15の学校および10の幼稚園を調査

新型コロナウイルスのパンデミックの間、世界中で学校が閉鎖されました。一説によると、90%近い教育機関が閉鎖されています。

しかし、子どもたちや教育現場における新型コロナウイルスの感染に関する経験的データは限られています。

この調査では、2020年1月25日から4月10日までの間、オーストラリアのニューサウスウェールズ州(NSW)の15の学校および10の幼稚園(本文中はearly childhood education and care: ECEC)における児童・職員間の新型コロナウイルス感染状況を調査しています。

なお、これらの教育施設では、新型コロナウイルスの陽性者が発生したら、接触歴のある大人や子どもを追跡し、感染する可能性がある濃厚接触者たちを14日間自宅隔離していたようです。また症状がある場合はPCR検査も実施しています。

27人の感染者と接触した、1448人を追跡して調査しました

調査期間中、27人(子ども12人、成人15人)の陽性者が、学校15校とECEC10園に通っていました。この27人と接触した濃厚接触者は1,448人になります。

1,448人の濃厚接触者のうち、症状があってPCR検査、抗体検査、あるいは両方の検査を受けた人は633人(43.7%)いました。

二次感染の発症率は1.2%

このうち、18人に二次感染が確認されました(発症率1.2%)。二次感染の方が見つかったのは、3つの学校と1つのECECになります。

二次感染者の5人(子ども3人、大人2人)は、3校(914人)で確認されました(感染率0.5%、5/914)。

接触者497人のうち、10のECEC施設のうち9施設で二次感染は発生していませんでした。しかし、ECECのある施設では、成人6人と子ども7人への感染が発生しました(感染率35.1%、13/37)。

なお、18人の二次感染者のうち5人(28.0%)は無症状でした。

成人から成人より、小児から小児の方が感染率は低い

新型コロナウイルスの感染率を感染源と感染対象で分類すると、

  • 小児から小児への感染は0.3%(2/649人)であったのに対し、
  • 小児から成人への感染は1.0%(1/103人)、
  • 成人から小児への感染は1.5%(8/536人)、
  • 成人から成人への感染は4.4%(7/160人)であり、
  • 成人と比べて子どもでは感染が広がりにくい可能性が示唆されました。

適切な対策を講じれば、学校で感染拡大することを防ぐことができる!

接触者を同定し、濃厚接触者を追跡し、必要に応じて検査するという流行管理戦略を講じたことで、教育現場での新型コロナウイルスの感染拡大に、子どもや教師が大きく寄与することはありませんでした。

これらの知見は、新型コロナウイルスのパンデミック期間中の学校閉鎖に関して、モデル化や公衆衛生政策の情報提供に利用することができるのではないかと考えられてます。

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