肘内障は、幼児期の子どもが突然腕を動かせなくなる状態で、肘関節に発生する亜脱臼が原因です。通常、腕を急に引っ張られたなど、特徴的なパターンがあります。その場合レントゲン写真の撮影は不要ですが、パターンに合わない場合レントゲン撮影を考える必要があります。今回はレントゲン撮影の頻度や骨折の見逃しについて調べた研究です。
Genadry KC, Mounteaux MC, Neuman MI, et al. Management and Outcomes of Children With Nursemaid’s Elbow. Ann Emerg Med. 2020 Oct 27;S0196-0644(20)30741-1.doi: 10.1016/j.annemergmed.2020.09.002. Online ahead of print.
肘内障と診断された子どもにおける骨折の見逃しに関する調査です
救急室(ED)で橈骨頭亜脱臼(肘内障)と診断された小児における、骨折見逃しの発生率と予測因子を特定し、X線撮影のパフォーマンスのパターンを特徴を探し出すことを目的に研究を実施しました。
2010年から2018年までに、45の小児救急室のいずれかの施設で橈骨頭亜脱臼と診断された10歳未満の小児について、Pediatric Health Information Systemのデータベースを検索しました。
X 線撮影の使用頻度は、全体および病院間で評価した。
また多変量ロジスティック回帰を用いて、患者の特徴と骨折見逃しの転帰(指標受診から7日以内の上肢骨折の再診)との関連を評価しました。
約9万人の情報を分析しました:骨折の見逃しは0.3%でした
対象となる小児患者は88,466人で、患者の年齢中央値は2.1歳、受診者の59%は女児であり、片側性が指摘された患者では60%が左腕に発生しました。
レントゲン撮影が行われたのは28.5%であり、病院でのレントゲン撮影の実施率は19.8%~41.7%でした。
上肢骨折の見逃しは247例(コホートの0.3%)に認められました。
骨折の見逃しは、6歳以上や鎮痛薬を投与されていた子どもに多かった
骨折見逃しのオッズは、6歳以上の小児(調整後オッズ比2.32;95%信頼区間1.12~4.81)、受診時にX線撮影を受けていた小児(調整後オッズ比2.52;95%信頼区間1.84~3.43)、およびアセトアミノフェンまたはイブプロフェンの投与を受けている小児(調整後オッズ比1.54;95%信頼区間1.15~2.06)で高くなっていました。
橈骨頭亜脱臼(肘内障)を呈して小児EDに来院した小児の4分の1以上の小児でレントゲン写真が撮影されたが、病院間でのばらつきは大きい。
骨折の見逃しはまれであった。
今後の取り組みは、この集団における不要なレントゲン撮影を減らすことを目標とすべきである。
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