ワクチンをうった後、時に熱が出ることがあります。その熱に伴ってけいれんを起こす(熱性けいれん)お子さんがいます。ワクチン、熱、けいれんの影響を受け、子どもの発達に影響を及ぼすのではないかと心配になる方がおられるかもしれせん。今回の調査は、オーストラリアの研究です。
Deng L, Wood N, McCartney K, et al. Developmental outcomes following vaccine-proximate febrile seizures in children. Neurology. 2020;Jul 21;95(3):e226-e238. doi: 10.1212/WNL.0000000000009876.
結論
ワクチン接種後の熱性けいれんとワクチン接種が関係しない熱性けいれんでは、子どもの発達への影響に差はみられませんでした。
ワクチン接種後に熱性けいれんを起こした子どもと、接種と関係なく熱性けいれんを起こした子どもやワクチン接種後にけいれんを起こさなかった子どもたちを比較
ワクチンをうった直後に熱が出てけいれんした子どもの発達は、異常がないのかを調べるために、この研究は計画されました。
ワクチン接種後2週間以内に(VP)熱性けいれん(FS)を経験した子どもたちの発達および行動の問題の有無を、非VP-FS(NVP-FS)の子どもたち(ワクチンと関係なく熱性けいれんを起こした)、およびけいれん発作を経験したことがない子どもたちと比較しました。
2013年5月から2016年4月までの間に、生後30か月未満で初めて熱性けいれんを起こしたこどもを、オーストラアの4つの小児科病院から集め、VP-FSまたはNVP-FSに分類しています
また、けいれん発作歴のない同年齢の子どもを対照としています。
初回の熱性けいれん後の12~24か月、またけいれんを起こしていない子どもたちは生後12~42か月時に、Bayley Scales of Infant and Toddler Development, Third Edition(Bayley-III)で発達の評価を行なっています。
この発達評価や保護者へのヒアリングにより、子どもの認知、言語、運動機能が評価されました。
ワクチン接種後の熱性けいれん、ワクチン接種後ではない熱性けいれん、それぞれ発達に問題は認めなかった
VP-FS児(n=62)、NVP-FS児(n=70)、対照児(n=90)の222人が参加しています。
まず3つのグループの間で、認知機能に有意差は認められられませんでした(F2,219=2.645、p=0.07)。
また他のすべての指標についても群間に差はなく、VP-FS患者では,NVP-FS患者や対照群と比較して、重大な障害や行動上のリスクの増加も認められませんでした。
ワクチン接種後に熱性けいれんを起こしても発達に影響はしない
VP-FS(ワクチン後の熱性けいれん)は、NVP-FS患者(ワクチンが関係しない熱性けいれん)や対照群と比較して、幼児の発達障害や行動障害のリスクの増加とは関連していませんでした。
VP-FSが子どもの発達に悪影響を及ぼすことがないことは,保護者や医療関係者に安心感を与えるものとなるでしょう。
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