意識障害の評価に用いるグラスゴー昏睡尺度(Glagow Coma Scale)ですが、頭部外傷の重症度との関係性をより明確にするために組まれた研究です。特に前方視的に、4万人を超えるデータを集積して分析していますので、過去の研究よりもより正確な情報を集めることができると期待できます。
Johnson MA, Nishijima DK,Kuppermann N, et al. The Association of Glasgow Coma Scale Score With Clinically Important Traumatic Brain Injuries in Children. Pediatric Emergency Care: November 2020 – Volume 36 – Issue 11 – p e610-e613doi: 10.1097/PEC.0000000000001701
GCSのスコアごとに脳外科的介入の程度について評価した
小児患者における臨床的に重要な外傷性脳損傷(ciTBI)の発生率をグラスゴー昏睡尺度(GCS)に基づいて正確に理解することは、検査と治療の指針となる疾患の事前検査確率を策定するために必要です。
この研究の目的は、鈍的頭部外傷後に救急室を受診した小児において、GCSスコア(範囲3~15)ごとにciTBIの有病率と脳神経外科的介入を検証することです。
全米25の小児救急施設が参加する、多施設共同研究ネットワークを活用した調査です
本研究は,PECARN (Pediatric Emergency Care Applied Research Network)に参加する25の小児救急室から前方視的に収集した観察データを二次解析したものです。
18歳未満の鈍的頭部外傷患者を対象としています。
4万人以上が対象、うち763人が解析対象になりました
解析には、GCSのスコアが完全に確認できた小児43,379人が含まれました。うち763人の小児が臨床的に重要な外傷性脳損傷ciTBI(1.8%)、200人が脳神経外科手術を受けました(0.5%)。
GCSスコアが4の小児患者は、臨床的に重要な外傷性脳損傷(ciTBI)の発生率が最も高く(21/22、95.5%)、16人が脳神経外科的介入(16/22、72.2%)を受けていました。
GCSスコア4からスコア15までの臨床的に重要な外傷性脳損傷(ciTBI)の有病率はほぼ直線的に減少していました(R = 0.92)。
1,341人の小児のうち、GCSスコアが14の107人(8.0%)にciTBIが認められ、17人(1.3%)が脳神経外科的介入を受けていました。
鈍的頭部外傷の小児におけるGCSスコアとciTBIの間には直線的な関係があった
鈍的頭部外傷の小児における、受診時のGCSスコアと臨床的に重要な外傷性脳損傷(ciTBI)の間には、ほぼ直線的な関係があることがわかりました。
臨床的に重要な外傷性脳損傷(ciTBI)と脳神経外科的介入の有病率が最も高かったのは、GCSスコアが4の小児でした。
GCSスコアが14の小児では、臨床的に重要な外傷性脳損傷(ciTBI)の有病率は無視できないほどでした。
これらの知見は、鈍的頭部外傷を受傷した小児のケアを行う医療提供者が、CTなどのテストを実施する前に、臨床的に重要な外傷性脳損傷(ciTBI)の有病率を正確に算出するために重要になります。
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