世界各地で、戦争や紛争が止むことはありません。とても悲しいことです。何よりも、何の罪もない子どもたちが戦火のなか、精神的な影響を受けて生涯にわたり苦痛を背負って生きていかないければいけないことは、特に悲しいことです。今回の報告は、そのような悲しい子どもを減らすためにできることについて行われた調査です。
Samuel N, Epstein D, Oren A, et al. Severe pediatric war trauma: a military-civilian collaboration from retrieval to repatriation. J Trauma Acute Care Surg. 2020 Oct 5. doi: 10.1097/TA.0000000000002974.
軍と民間の連携による、重症小児対策についての報告
現代の紛争は、民間人と子どもたちに不釣り合いな被害をもたらし、かつその被害は増加しています。
2013年以降、何百人ものシリアの子どもたちがイスラエルの国境に逃れてきています。
重い傷を負った子どもたちは、軍の空輸のためにトリアージされ、イスラエルの民間外傷センターに運ばれました。
今回、小児の戦場における重症外傷の安定化、搬送、院内管理のための軍と市民の協調した対応のユニークなモデルを記述しました。
シリア国境からイスラエルの民間の外傷センターに搬送された子どもたちが対象
シリア国境から軍用ヘリコプターで搬送された重症小児外傷死傷者の入院前および入院中のデータを抽出しました。データは、軍および民間医療センターの外傷登録の電子カルテから抽出しています。
シリア国境からイスラエル国内のレベルIおよびレベルIIの外傷センターに16人の重傷児(年齢中央値9.5歳)が搬送されました(IQRは6.5~11.5)。
すべての患者は集中治療室(ICU)に入院しています。
8人の患者が飛行中に救命処置を受け、7人が気道管理を必要とし、5人が胸腔鏡手術を必要としました。
重症度スコアの中央値は35(IQR 13~49)でした。
7 件の開腹手術、5 件の開頭手術、3 件の整形外科手術、1 件の皮膚移植手術が行われました。
ICUと入院期間の中央値はそれぞれ6日(IQR 3-16)と34日(IQR 14-46)であった。15名の患者が退院まで生存し、家族の元に戻ることができました。
この小規模コホートの所見は、重度の小児戦時外傷の軍民連携を模索する有用性を示唆しています。
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