新型コロナ感染が拡大すると、救急室に運ばれてくる患者さんのうち、感染者が感染以外の症状で受診することがあります。医療者は、すべての患者さんが感染者かもしれないと考えて備える必要があります。一方、心臓マッサージは体力を要しますので、防御服を着るとパフォーマスが落ちる可能性があります。今回はこの疑問に回答する調査です。
Donoghue AJ, Kou M, Good GL, et al. Impact of Personal Protective Equipment on Pediatric Cardiopulmonary ResuscitationPerformance. Pediatric Emergency Care. 2020;36:267-73.
感染防御服を着て心臓マッサージをすると質が落ちるのではないか?
米国の複数の施設が参加したこの研究では、感染防御服を着ることで、心臓マッサージ(胸骨圧迫)の効果に変化があるのかについて調べました。
ベースラインとして、普通の服装を着て乳児のマネキン に対して心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行い、その後しばらく休憩したのち、感染防御服を着て心臓マッサージ(胸骨圧迫)をしています。
心臓マッサージ(胸骨圧迫)の質は、圧迫の深さや回数、また圧迫を緩めたときの胸の上がり方を調査することで検討しています。また対象者の疲れ具合も聞いています。
感染防御服を着ても、心臓マッサージの質は変わらなかった!
合計で108人が参加しています。このなかには救急隊員や病院で働く医師たちが含まれています。
胸骨圧迫の深さや速さ、また圧迫を緩めたときの胸の上がりに、有意な差は認められませんでした。
ただ、救急隊員のなかに、感染防御服を着た状態で心臓マッサージ(胸骨圧迫)をすることで、疲労を感じやすくなった人たちがいました。
これまで通り心臓マッサージを続けるだけ!
通常の心臓マッサージ(胸骨圧迫)は、良い質の圧迫を継続するため、疲れる前、おおよそ2分おきに実施者を交代させることが勧められています。
今回の結果から考えると、従来通り実施者を2分で交代し続けている限り、疲労のために心臓マッサージ(胸骨圧迫)の質が落ちることは避けることができそうです。
自分たちを守りつつ、患者さんたちに最善の医療が提供できるよう、備えていきたいですね。
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