新型コロナウイルスが広がると、不要不急の行動を慎むよう通達が出ました。その結果、本来は早く受診すべきであった子どもたちの病院受診が遅れ、問題が発生しているのではないかと気になるところです。今回はオーストラリアの小児救急室からの報告です。
Cheek J, Craig SS, West A, et al. Emergency Department utilisation by vulnerable paediatric populations during COVID-19 pandemic. Emerg Med Australas. 2020 Jul 23;10.1111/1742-6723.13598. doi: 10.1111/1742-6723.13598.
感染拡大の懸念が広がり、救急室の受診患者数は約半数になった
調査はオーストラリアのビクトリア州にある2つの小児病院と2つの地区病院の救急室で行われました。
オーストラリア政府は、2020年3月20日に国境閉鎖を発表しています。
この後2か月間の救急受診患者数を2019年の同時期と比較すると、総受診件数は47.2%減(26871件対14170件)でした。また1日の受診患者数の平均値に有意な差を認めました(440.5件対232.3件、差-208.2、95%CI-221.7~-194.7、p<0.001)。
しかし、精神的訴えで受診する子どもは増えていた
全体の受診患者数は減っていたにもかかわらず、逆に精神的異常を訴えて救急室を患者する子どもは、前年の同時期に比べて35%(485対656)増加していました(1日平均8.0対10.8、差2.8、95%CI 1.7~3.9、p<0.001)。
ちなみに新生児の患者の受診件数に有意差はありませんでした(2%増加、498対507、1日平均8.2対8.3、差0.1、95%CI -0.8~1.1、p=0.754)。
全体の受診が減っているなかで、特定のグループの子どもたちだけ受診が増えていました。
今後も感染が拡大し、負担を強いる日々が続くようであれば、やはり社会のなかで特に弱い立場にある子どもたち、その精神面への配慮が必要です。
私たち医療者だけでなく、地域社会や家族も一緒になって、対策を立てる必要がありますね。
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