新型コロナウイルス感染症は、ADHDの子どもにどのような影響を与えたのか?

新型コロナウイルス

日常生活や対人関係に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症。特に発達障害を持つお子さんは、想像もできない負担がかかっている可能性があります。

今回は、中国からの調査をご紹介します。ADHDと診断された子どもたちが、学校閉鎖を受け、どのような影響を受けたのかについて調査されています。

Zhang J, Shuai L, Yu H, et al. Acute stress, behavioural symptoms and mood states among school-age children with attentiondeficit/hyperactive disorder during the COVID-19 outbreak. Asian J of Psychiatry. June, 2020, 102077. https://doi.org/10.1016/j.ajp.2020.102077

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ADHDの症状の一部は悪化していました

ADHDと診断されている6~15歳の学童児の保護者、241名に聞き取り調査を実施しました。

調査項目は次の5項目。(1) ADHDの行動症状 (2)アウトブレイク時の子どもの急性反応 (3) 子どもの活動の時間配分:勉強、電子機器の使用、電子機器を使用しない娯楽、保護者との交流に関するおおよその時間配分 (4) 子どもと保護者の気分の状態 (5) 新型コロナウイルスのメディア報道に子どもと親がどれだけ注意を払ったか

新型コロナウイルスのアウトブレイク時、ADHDの子どもの一部の症状は、通常時に比べて有意に悪化していました。特に集中力の低下は53.9%、怒りの頻度の増加は67.2%、日常生活の悪化は56.0%で報告されていました。

またADHDの症状に有意に影響したのは、子どもの全体的な気分、両親の全体的な気分状態、および子どもの学習時間になっていました。

子どもの否定的な気分状態がADHD症状と関連していました。また親の気分状態も子どものADHD症状に影響を与えることも示されています。

学校が閉鎖され、子どもが家にいるという特殊な状況は、子どもと親の双方にとって、より高いストレスをもたらす可能性があると考えられます。

この結果は、ネガティブな気分の治療とコントロールを重要視する上で、臨床的に重要な意味を持っています。

学習時間はADHD症状と逆方向に関連していました

新型コロナウイルスの感染が拡大していた期間中、子どもたちは自宅でオンライン学習を行っていましたが、今回の結果からは、学習時間が長くなるほどADHD症状が減少する可能性が指摘されています。

結果を検証するためには、今後さらに研究が必要ですが、家庭で学習する子どもたちのADHD症状を軽減するための戦略になりうる可能性があります。

逆に、オンライン学習をより効果的に利用できる子どもほど、集中力が高くなる可能性があり、そのメカニズムについては、今後の調査が必要であると考えられます。

このパンデミックによって加速されたオンライン教育の急速な増加を考えると、この研究の方向性は特に有用だと考えられます。

ADHDを持つ子どもたちは、集中力の低下や怒りの感情の増加など、特定の症状の悪化を認めていました

本研究にはいくつかの限界があります。第一に、この調査は保護者による報告ですので、子どもがどう感じているかについてはわかりません。またこのタイプの研究では、原因と結果の関係を評価することはできません。あと、子どもの投薬状況や通院状況は評価されていないので、偏った状態が評価されている可能性もあります。

ただいずれにしても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、ADHDを持つ子どもたちは、集中力の低下や怒りの感情の増加など、特定の症状の悪化を認めていました。

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