虐待を受けた子どもたちに、小児科医たちはどのように向き合うべきか?

子育て・ホームケア
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

虐待を受けた子どもたちは、成長や発達の過程で、計り知れないネガティブな影響を受けています。そのような子どもたちに、地域において医療を提供する小児科医、またかかりつけ医は何が出来るのでしょうか?社会の医療を守ることを通し、社会に貢献する医療者が虐待を受けた子どもたちに出来ること、そのような視点で行われた調査です。

Campbell KA, Gamarra E, Frost CJ, et al. Childhood Adversity and Health After Physical Abuse. Pediatrics October 2020,  146 (4) e20200638; DOI: https://doi.org/10.1542/peds.2020-0638

虐待を受けた子どもたちに、プライマリケア医(かかりつけ医)が出来ることを解明するために調査が行われた

児童保護サービス(CPS)は、幼少期に虐待による有害体験を継続的に受けている子どもたちを認識する機会があります。

CPS: Child Protective Serviceは、日本の児童相談所と同じような機能を持つ組織。虐待をうけた可能性がある子どもがいると、緊急度に応じて現場に行って評価を行い、状況に応じて子どもの保護を行う。

しかし、CPS が関与している子どもの有害体験 と子どもの健康との関係や、この関係を緩和するためのプライマリケア医の役割は不明です。

そこで、虐待を受けた子どもたちの有害体験と健康との関係、またプライマリケア医ができることを解明するため、調査が行われました。

身体的虐待がCPSで認められた2歳から12歳までの子どもの養育者を対象とした収束的混合方法研究を実施し、有効な23項目の多次元健康調査であるPedsQL4.0を用いて、累積された有害体験と子どもの健康に関連したQOL(HRQoL)との関連をモデル化しました。

面接では、虐待による有害体験の有無、有害体験が子どもの健康に与える影響、およびこのような状況におけるプライマリケア医の役割についての記述を引き出しました。

虐待による有害体験を持つ子どもには、健康に関連したQOLの低下を認めました

調査対象となった187人の養育者は、子ども1人当たりの平均5.5(±3.3)の有害体験への曝露を報告しました。

完全に調整したモデルでは、各虐待による有害体験は1.3ポイント(95%信頼区間:0.7-2.0)のHRQoLの低下をもたらし、有害体験曝露に関連したHRQoLと臨床的に重要な差を生じていました。

この関連は、心理社会的 HRQoL の低下によって説明され、患者中心の医療を提供することでは緩和されることはありませんでした。

信頼できるプライマリケア医が、虐待を受けた子どもたちの支援者になりうる

面接を受けた27人の養育者は、有害体験曝露が子どもの健康に及ぼす影響について話をしました。

多くの人は、信頼できるプライマリケア医が、このような経験をした後に子どもの健康をサポートできると感じていました。

CPSが関与している子どもは、HRQoLの低下と関連した有害体験への曝露を受けています。

プライマリケア医はしばしばCPSの関与や他の有害体験に気付いていませんが、多くの養育者は、逆境の後の子どもの幸福度を向上させるために、子どものプライマリケア医の支援を歓迎していることがわかりました。

つまり、虐待を受けたあとに健康上の問題を抱える子どもたちの潜在的な支援者として、養護者は小児科医を挙げています。

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