世界各地で感染が拡大している新型コロナウイルス。感染拡大防止の一手として、教育機関が閉鎖されています。日本でも3月頃から休校になるところが増えたのではないかと思います。
今回は、アメリカで実施された学校閉鎖の効果を検証した報告です。結果としては、罹患率、死亡率ともに60%近く減少していました。
学校を閉鎖するということは、子どもたちに大きな負担を強いることになります。今後も感染の流行次第では、学校を閉鎖することを検討せざるを得ないかもしれません。現時点での情報でわかる範囲で、学校閉鎖の是非を検証しておく試みは重要です。
出典:Auger KA, Shah SS, Richardson T, et al. Association Between Statewide School Closure and COVID-19 Incidence and Mortality in the US. JAMA. July 29, 2020. doi:10.1001/jama.2020.14348 https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2769034
州全体の学校閉鎖は、新型コロナウイルス感染者の発生率および死亡率の低下に影響を与えたか?
この問いに答えるため、2020年3月9日から2020年5月7日までの間に実施された、米国の全50州を対象とした人口ベースの時系列分析を行っています。各州の学校閉鎖後、少なくとも6週間はデータを収集しています。
時系列分析:時間の経過に伴って連続して変化するデータを解析する統計手法
幼稚園から高校3年生までの学校閉鎖の時期と、新型コロナウイルス感染者の人口10万人あたりの発生率や死亡率との関連を検討しています。
学校閉鎖は、新型コロナウイルス患者の発生率死亡率の有意な低下と関連していた。
調査したところ、学校閉鎖は、新型コロナウイルスの発生率(1週間あたりの調整済み相対変化率、-62%[95%CI、-71%~-49%])および死亡率(1週間あたりの調整済み相対変化率、-58%[95%CI、-68%~-46%])の有意な低下と関連していました。
なお、これらの関連はいずれも、学校閉鎖時の 新型コロナウイルスの累積罹患率が低い州で最も大きく認められました。例えば、新型コロナウイルス患者の発生率が最も低い州では、発生率の相対的変化が-72%(95%CI、-79%~-62%)であったのに対し、累積発生率が最も高い州では-49%(95%CI、-62%~-33%)となっていました。
この解析から得られたモデルでは、新型コロナウイルスの累積発生率が下位25%と上位25%のときを比較して、新型コロナウイルスの累積発生率が下位25%にあるときに学校を閉鎖すると、人口10万人当たりの症例数が26日間で128.7人減少し、人口10万人当たりの死亡数が16日間で1.5人減少すると推定されました。
つまり、感染が拡大する前に学校を閉鎖することは、ある程度効果がある・・
実際は、学校の閉鎖以外に、在宅勤務を取り入れたり、ソーシャルディスタンシングを実施したり、また手洗いを励行したりと、いろんな因子が影響しています。
ただ今回の調査は、これらの医療行為とは異なる介入の影響もある程度加味して検証されています。その辺りを考えると、日本で学校閉鎖を比較的早期に実施したことは、その後の感染拡大の防止に貢献した可能性は十分あったと言えるのかと思います。
ただ今後感染がさらに拡大した時に、再度学校を閉鎖するかについては、今回の調査の結果を見る限り、改めて検討が必要になると思います。
学校を閉鎖したことで失われたものも多くあります。子どもたちや家族へのネガティブな影響も加味して検討することも必要になるでしょう。
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