高校のスポーツにおける脳震盪の発生率は、過去の推定値はありますが、最近のデータがありません。発生率や原因となるスポーツ、発生状況などのデータを整理すると、今後の対策を立てる時に役立ちます。今回は米国の高校生を対象にした調査です。
Kerr ZY, Chandran A, Nedimyer AK, et al. Concussion Incidence and Trends in 20 High School Sports. Pediatrics November 2019, 144 (5) e20192180; DOI: https://doi.org/10.1542/peds.2019-2180
アメリカの高校で行われている20のスポーツを対象に調査
脳震盪の発生率と分布を継続的にモニタリングすることは、パターンの変化を評価する上で重要です。
本研究では、2013-2014年から2017-2018年までの20の高校スポーツにおける脳震盪の疫学を記述しています。
この記述的疫学研究では、高校のアスレチックトレーナーの便宜的サンプルを用いて、全国高等学校スポーツ関連傷害サーベイランス研究(High School Reporting Information Online)から傷害およびアスリート暴露(AE)データを入手しました。
1 万人の AE あたりの脳震盪率と 95%信頼区間(CI)および分布を算出しました。
また性差のあるスポーツ(サッカー,バスケットボール,野球・ソフトボール,クロスカントリー,陸上,水泳)では、性別による率の違いを調べています。また、研究期間中の時間的な傾向も評価しました。
1万回アスリートが運動すると、4.17回脳震盪を起こしていた
合計で 9542 件の脳震盪が報告され、全体の発生率は 1 万 AE あたり 4.17 件でした(95% CI:4.09~4.26)。
サッカーによる脳震盪率が最も高かった(1 万 AE あたり 10.40)。
研究期間中、サッカーの競技会関連の脳震盪率は増加し(1 万 AE あたり 33.19~39.07)、練習関連の脳震盪率は減少しました(1 万 AE あたり 5.47~4.44)。
すべてのスポーツにおいて、再発性脳震盪率は減少しました(1 万 AE あたり 0.47~0.28)。
脳震盪の発生率は、多くのスポーツにおいて、競技会や練習の後半にも高くなっていました。
脳震盪の発生率は、女子の方が高かった
性別を比較可能なスポーツでは、女子の方が男子よりも脳震盪発生率が高かった(1 万 AE あたり 3.35 対 1.51、傷害率比 = 2.22、95% CI: 2.07~2.39)。
また、性差のあるスポーツの中で、女子は男子よりも再発した脳震盪の割合が高かった(9.3%対6.4%;傷害率比=1.44;95%CI:1.11~1.88)。
すべてのスポーツにおいて、フットボールの練習に関連した脳震盪と再発脳震盪の割合は減少しました。
脳震盪の発生率の変化は、脳震盪の発生率、診断、管理の変化と関連している可能性があります。今後の研究では、傾向を継続的に監視し、予防戦略の効果を検討すべきです。
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