軽症頭部外傷のあと、一部の子どもたちに脳しんとう症状が見られることが指摘されています。つまり軽く頭を打っただけで大きな問題はないものの、脳しんとうを起こしているということです。ただ詳細はわかっていません。今回の調査は、脳しんとうを起こす可能性の高い状況を明らかにすることが目的です。
Ewing-Cobbs L, Cox CC, Clark AE, et al. Persistent Postconcussion Symptoms After Injury. Pediatrics November 2018, 142 (5) e20180939; DOI: https://doi.org/10.1542/peds.2018-0939
軽症頭部外傷後の脳しんとうのリスクを明らかにすることを目的に調査を実施した
軽度頭部外傷(mTBI)の1年後に持続する脳しんとう後症候群(PCS)の発症因子に、受傷前の因子、人口統計学的因子、および家族因子が影響しているかどうかを検討しました。
救急室を受診した軽症頭部外傷の子どもたちmTBI(n = 119)、合併症を有する軽度頭部外傷(cmTBI)(n = 110)、または整形外科損傷(OI)(n = 118)を負った子どもたちを前方視的な縦断的コホート研究に登録しました。
介護者からは、受傷前の人口統計学的特徴、小児および家族の特徴を特徴づけるために、調査情報を集めました。脳しんとう後症候群(PCS)は有効な評価尺度を用いて評価されました。
傷害前症状を調整した多変量一般線形モデルを用いて、4~8歳、9~12歳、13~15歳の小児における受傷後3ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後のPCSの予測因子を検討しました。
ロジスティック回帰を用いて、外傷性脳損傷から1年後の慢性PCSの予測因子を調べましました。
脳しんとう後症候群の症状の有無では
受傷後の身体的、感情的、認知的、疲労の脳しんとう後症候群の症状(PCS)の症状は、mTBI群とcmTBI群で同程度であり、OI群と比較して有意に高くなっていました。
青年期の脳しんとう後症候群の症状(PCS)は上昇して改善したが、幼児では初期症状が低く変化が少なくなっていました。
受傷前の脳しんとう後症候群の症状(PCS)は同様であしたが、女子は男子に比べてすべての時点で症状が上昇していました。
脳しんとう後症候群の症状(PCS)の発症リスクの要因には、女性であること、思春期、受傷前の気分障害、低所得、家族の不和などがありました。
社会的資本は保護因子でした。
脳しんとう後症候群の症状(PCS)は外傷性脳損傷群では25~31%、OI群では18%で、受傷後1年時点でも持続していました。
慢性脳しんとう後症候群(PCS)はじょじ、合併症を伴う頭部外傷であったことが発症要因でした
慢性脳しんとう後症候群(PCS)のオッズは、女児では男児の2倍近く高く、cmTBIの幼児ではmTBIの幼児よりも4倍以上高かくなっていました。
mTBIと起立耐性失調の子どものうち、受傷後1年後にPCSが持続する子どもはかなり少数派でした。
非合併性mTBI(25%)、合併性mTBI(31%)、整形外科的損傷(18%)後の1年間にPCSが持続することを予測するために用いられた脆弱性因子には、受傷前の情動問題、女性の性、思春期、家族のストレスが含まれていました。
女子は男子に比べて慢性PCSを発症するオッズが2倍でした。
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