子どもが幼稚園にいるときに学校で学ぶ準備ができていることが、小学校後期の達成度を予測できるという研究者たちがいます。さらに別の研究者は、この時期の準備状況と高校での学業成績、ライフスタイルの選択、生産性との関連性がある可能性も指摘しています。実際はどうなのでしょうか?今回紹介する調査は、この疑問に対し回答を与えるものです。
Caroline Fitzpatrick, Elroy Boers and Linda S. Pagani. Kindergarten Readiness, Later Health, and Social Costs. Pediatrics November 2020, e20200978; DOI: https://doi.org/10.1542/peds.2020-0978
5歳時の数や言語能力と17歳時の学業のつながりを検証した
幼稚園の時の準備状況と高校終了時の学業、心理的、健康面との関連を推定することを目的に、調査が行われました。
カナダの子ども966人が対象です。
まず5歳の時点で、訓練を受けた試験官が、子どもの数の知識と語彙力を評価しました。
その後、子どもの教師は幼稚園における数や言語スキルを報告しました。
さらに17歳の時点で、学業成績、学校とのつながり、不安度、薬物乱用、身体活動への関与、身長と体重をフォローして調べました。
また、各参加者について、成績、学校との関わり、成績保持率に基づいて、高校中退のリスクを推定しました。
5歳時の準備状況は、学業だけでなく生活面にも影響を与えていた!
幼稚園の時の数字を扱うスキルは、高校終了時の成績の向上(β=0.17、P < 0.01)と中退リスクの低下(β=-.20、P < 0.001)に寄与していました。
また、語彙力は不安感受性の低下(β=-.11、P < 0.01)を予測していました。
幼稚園のクラスへの参加は、高校の成績の向上(β=0.17、P < 0.001)、中退リスクの低下(β=-.20、P < 0.01)、学校とのつながりの向上(β=0.15、P < 0.01)、薬物乱用のリスクの低下(β=-.21、P < 0.001)、および身体活動への参加の増加(β=0.09、P < 0.05)を予測していました。
幼稚園のクラスへの参加は、その他にも17歳時の太りすぎのオッズが65%減少(オッズ比=0.35)することと関連していました。
「三つ子の魂百まで」は本当だった!
幼児期の学業面での準備は、大人になるまでの学業や生活を予測することがわかりました。
これらの知見から、準備をして学校に通い始める子どもたちが、ライフスタイルの優位性を得ることが示唆されました。
幼稚園での就学準備を促進することで、高校中退によって生じる健康負担を軽減することができることもわかりました。
幼児期の学習準備の重要性を再確認し、早期の介入が集団の生産性と健康に利益をもたらす可能性が示唆されました。
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